もうひとつ、心得や志はブリーダーと同じくするものの、ショップと提携せず(商業性を考えず)に良い個体を一般の飼い主さんへ譲渡しているブリーダーも存在しています。いわゆるホビーブリーダーです。
わが国にはハムスターのショウもコンテストも開催されていないので、いわゆるショウブリーダー(プロブリーダー)は存在せず、「ブリーダー」といえばイコールで繁殖者と位置付けられています。しかしすべてを繁殖者で括ることはできません。そしてブリーダーと一般飼育者(繁殖について素人)と両極だけでも収まりません。
このサイトで定義付けるホビーブリーダーとは、ブリーダー側に位置するものの商業性を持たない繁殖者ということにしたいと思います。
ホビーブリーダーは機会さえあればショップと提携していけるだけの繁殖技術を持ち合わせているけれど、ショップへ卸すことはほとんどありません。未来の飼い主さんと向き合い、個体情報とともに里子として個体を譲渡します。時には繁殖計画、技術などを共有してライン分けをすることもあるでしょう。里親さんに対して自分の飼育法をナレッジすることもあるでしょうし、いろいろな相談や質問について答えたり、いっしょに考えたりもするでしょう。
ブリーダー(またはシリアスホビーブリーダー)との違いは飼育環境などに現れてきます。
彼らの飼育環境はブリーダーほどストイックとは言えません。ごく一般的な飼育方法を用いており、あるいはさらに高水準な環境といえる場合もあります。個体(ライン)の健康を維持することで良質化を図る形での品質保持という点において、どんな環境下でも生き抜ける強い個体へ淘汰する形での品質保持をするブリーダーと大きく異なります。
彼らの持っている飼育環境やテクニックは、しばしば弱い個体をより強く体質改善してしまうことがあります。ですが、疾患のある個体を治療して譲渡することはまずありません。また後天的にせよ疾患のみられる個体での繁殖はいっさい行うことはありません。例を言えば下痢をしやすい親を用いて繁殖をしたり、その個体を健康な個体とともに生活させるような初歩的な間違いはしないし、ペットショップからわざわざ雑種の疑いがあるような個体を買わないし、まして雑種かもしれない個体を親にして繁殖を行なうなどはありえません。
いわゆる里親里子募集サイトであちこちで焦って募集をかけるような「愛好家」の繁殖個体とは一線をおき、遺伝情報もふまえて良質の個体を自信をもって譲渡しています。そのために個体はベビーより育ってしまったものになる場合も多々あります。ハムスターにとって最も大事な幼児期を徹底した管理をもって体質その他を強化するために、品質はショップ提携ブリーダーには劣るけれど一般的にショップで売られているファーム産のものよりはマトモだと言えます。(※この部分は、あくまでも一般的なイメージのファーム産のハムスターと理想的なショップ提携ブリーダーのイメージを元に記述しています。ファームに分類される大規模ブリーダーでも質に気を配っているブリーダーも、ひどい繁殖をしているショップ提携ブリーダーもいることは現在までの調査で判明しておりますので、あくまでも目安だとして読んでくださる様お願いいたします。またネットで里親募集されている方の中にはきちんと血統書を添えて里子に出している方もいらっしゃいます。ご本人は認めていなけれど、こういった方も立派なホビーブリーダーなのではないでしょうか?)
金銭のやり取りがないので、育てていく分のコストの相殺もないため、ことハムスターに関する収支では当然万年の赤字ということになりますが、彼らホビーブリーダーの喜びはブリーダーのそれと大差はないと思われます。
あなたがこれからブリーダーとして繁殖目的でハムスターを探すのならば、ブリーダーが提携しているペットショップの個体を買い求めるか、ホビーブリーダーが育てた個体を手に入れるのがよいと思われます。良いブリーダーに関する情報をあつめて、その人から直接譲り受ける交渉をするか、卸しているショップを聞く…などなど、良質の個体を入手するためには多少の苦労と工夫が必要になりますが、力を惜しんではいけません。
いくら勉強をして技術や論理だけ得ても、肝心の「親として良い個体」を持たないのならばブリーダーへの道はまだまだ遠いものになるのですから。
インターネットのハムスター愛好家サイトの中でごくたまに、「私はペットショップに卸している」という飼い主さんを見かけます。
彼らの中にはいわゆる“バックヤードブリーダー”が存在していますので、ネットで勉強していくには読み手にかなりの注意が必要といえます。
バックヤードブリーダーとは素人考え=「可愛いから繁殖させた」「そのために繁殖の勉強をした」「遺伝は知っている」というだけの繁殖の本質を理解していないひとたちです。
困ったことにホビーブリーダーと外見的(表面的)な違いはつきにくいので、良質な個体を譲渡するホビーブリーダーがバックヤードブリーダーと同等に見られることもしばしばあります。しかしネットで人気がある繁殖者や珍しい個体を飼っている飼育者らがすなわちホビーブリーダーというわけではありません。里親募集で希望する個体を見つけたとしても、まずは繁殖者を第一の基準にすることを強くお奨めします。
つぎつぎに繁殖に成功しているという繁殖者のなかには、たとえハイブリッドの疑いがあっても「可愛い我が子だから」と繁殖に使うひともいるようです。こういうひとのもとの里子は、本人がどう言い訳しようと雑種である可能性は否定できないものです。
また彼らがショップに持ち込むのは大抵が「自分の手元に置いておきたくない個体」と受けとめられてもしかたがないものだと思われます。
何らかの事情ができて生まれてきた子を育てることができない、というもっともらしい理由をいう場合もありますが、、注意してウォッチしていると「育てることができない」というわりに親ペアや他の個体を手元に置いていたり、しばらくしてどこかでレア個体を仕入れてきたりします。巧みな言葉に惑わされてしまってはいけません。
ごくたまに「ショップにお願されている」という免罪符を見たこともあります。注文依頼が取れるなんてすごいブリーダーだな、と思っていたのですが、やっていることや考え方はバックヤードブリーダーと差はありませんでした。残念なことにネットの世界ではそんなバックヤードブリーダーが持て囃されているようですが…。
あなたは、手元においておけない個体だから他人に譲渡する(里子に出す)という行為をどう思われますか?
これはハムスターに限らず、犬や猫などどんな動物にでも共通する問題です。
数の問題で、これ以上の頭数を育てられないというのであれば、どうして“可愛い我が子”に出産をさせたのでしょう。自分の飼育環境は自分がよくわかっているはずです。事前に判断ができる問題なのに、出産後になって気がつくのは変ではないでしょうか。
またどうして“いらないと選別した個体”を他人に渡すことができるのでしょう。自分の中のなんらかの選択基準から外れた個体であっても、みんな同じ「可愛い我が子が産んだ子供」です。どうして育てていかないのか。こういった矛盾の多いひとを見ていると、愛好とはただ口先だけのことと思えてきます。
バックヤードブリーダーは必ずと言って良いほど、ブリーダーのスタンダード維持・遺伝疾患等の主張に「じゃあミスカラーや疾患個体は産まれて生きていく権利がないのか」と反論しますが、これはあきらかな論旨のすりかえです。
どんな個体であれ産まれてきた瞬間に生きるチャンスが与えられます。産ませるために働きかけたもの(=飼い主)が、彼らの持つチャンスを「権利」という言葉にわざわざ置き換えて、第三者に苦労(将来起こるかもしれない弊害を含む)を譲り渡すことが問題なのです。つまり自分の責任を他人へ譲渡することを問題としているのです。そして自分の勉強不足が招いているという事実を受け止めようとしないことも。
ブリーダーを目指すのであれば、動物たち個体の問題と自分の行為の問題とを区別して考えることができなければなりません。
他人に有償であれ無償であれ譲渡するのならば、より良い個体であるべきです。
それ以外は自分で育てるか、処理する――かつて犬のシリアスホビーブリーダーさんにお話しを伺ったところ、
『産ませてみて、望んでいた個体(スタンダードに適う個体、ライン維持に必要な個体)が出なかったら安楽死させるくらいの覚悟がないのなら、どんな動物でも繁殖はしては行けない』
と強く言われました。さらに『譲渡した個体が将来疾患を起こしたとき、まったく責任を負いたくないのならブリーダーにはなれないよ』
これはどんな動物のブリーディングにも当てはまることだと思われます。むろんハムスターにも。≫関連;安楽死の一例
安楽死させることがなくなるように、スタンダード、毛色遺伝学、遺伝的疾患、ライン作りにはともかく多くの情報と勉強していくことが必要であり、その勉強にゴールはなく、自分で勝手にゴールを作ってもいけません。
なぜ良い個体以外は譲渡しないのか。
それは将来遺伝的疾患で悲しむ飼い主を出さないためです。そして何より種を守るため。
ハムスターの場合は犬や猫のように去勢避妊手術が受けられません。産まれてきた個体が“ミスカラー”でも飼い主如何で繁殖を行なうことができてしまいます。たとえペットタイプの個体と名うっていても、「我が子の可愛い子供がみたい」と飼い主さんが思えば…。
だからこそブリーダーならば、他人に自制を求めるよりも自分が考え働きかけていくべきです。ラインを正常に維持し、世の中に巣立たせる個体はすべて良質な個体であることが必須なのです。
はじめに
各ハムスターについて
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