ブリーディングを行なうのであれば、その種についての知識を身につける事が飼い主には求められます。遺伝の基本とブリーディングについてを理解すれば無駄な繁殖をしないで済む場合も多いはずですし、また知らなければいずれ起こるだろう危険を避けることはできません。
ブリーダー側にしてみると、「ハムスターは家族だ」と声高に公言するハムスター愛好家ほど、いわゆる"珍しい"ハムスターを欲しがる傾向にあることに危惧し、盲目的に入手しかかる態度・執着心・行動などに疑問を感じています。
彼らはしばし無茶な交配をしてニューカラーを作り出そうとしたり、品質にこだわるブリーダーの声や気持ちを踏み躙って「誰も持っていない」という面をステイタスにしてしまい、本当に大切なことを忘れて夢中になってしまうケースがこれまでも多々ありました。これは非常に怖いことです。
まずはじめに繁殖に関して最も困った問題にして圧倒的に多いケースである交雑種(ハイブリッド)について考えてみましょう。
なぜハイブリッドが産まれてしまうのか。
答えを先に言うと、『知識や危機感のない者がいたずらに新種を作り出そうと無理に交雑を行うため』、またはその逆で『交配させようとしているハムスターが別種とは思いもしないで行ってしまうため』です。両者とも繁殖についての勉強不足が原因です。
この問題に関して、海外のブリーダーサイトはウィンターホワイト(ジャンガリアン)とキャンベルは交雑するべきではない、という注意を掲げています。なぜでしょうか?
同じヒメキヌゲネズミ属(種内)といえども違う種であるウィンターホワイトとキャンベルでの交雑は、個体における問題としてはオスメスの組み合わせ方によって出産直前に母子共に死亡したり、死亡しないまでもネズミにあるまじき難産となる等の大変なリスクが生じます。
それよりもっと大きく、種という大局でハイブリッド問題を鑑みると、つまり生み出された子供は当然両方の種からの遺伝を受け継いだ雑種(ハイブリッド)となるために、どちらの種と交配しようとも純粋な血統に異なる遺伝子を持ち込み、遺伝的に“血”を汚染していくこととなります。
結論として、交雑は個体の生命に関わるだけでなく、それ以降子々孫々と受け継がれていくべき種の存続に悪影響を及ぼすことになります。
ブリーディング先進国の海外ブリーダーはそれぞれの思う言葉(表現)で、ハムスターという種を愛していくためにネットを通じても広く世界に主張しているのです。
可能だけどやらなくても良いことを、わざわざ将来のリスクを背負ってやる意味はありません。自分が飼育している“生命”を慈しまない人間などいないはずです。だからこそ命をいたずらに危険な目に遭わせることなく、またその子々孫々の行く末まで考えるべきというわけです。
ハイブリッドを生み出すことはブリーダー失格の行為です。
飼育書、特に古い飼育書の中に「ドワーフ・ハムスター(ウィンターホワイトとキャンベル)は交配可能」と記述されていることがあります。残念ながらこの説を信じて交雑している似非ブリーダーも国内にはいるようです。彼らはおしなべて「キャンベルとウィンターホワイトは一部生息地が重なっているためハイブリダイゼーションが自然環境下で起こっている」という説をもっているようです。
しかし真のブリーダーを目指すみなさんは、この説が事実であろうとなかろうと、これをもって「ハイブリッドはゆるされる」とする素人考えを持つことは絶対にやめていただきたい。交雑できる可能性と、実際に交雑するのかどうかはまったくの別問題です。
日本本土には昔からハシブトガラスとハシボソガラスが存在していますが、この2種のカラスの間でハイブリッドは生まれていません。昔からハシブトガラスはハシブトガラス、ハシボソガラスはハシボソガラス、現在でもきちんとその特徴から簡単に見分ける事ができます。もし生息地が重なっている=ハイブリッドがごく普通に生まれるというのであれば日本のカラスにハシブトやハシボソという種類の区別は出来ないはずです。
飼育施設等から逃げ出したタイワンザルが問題になった時、このカラスの事例もあってか逃げ出したタイワンザル同士がニホンザルとは別に群れを作って交雑せずハイブリダイゼーションは起こらないのではないかという意見もありました。しかし残念ながらタイワンザルは独自に群れを作らずニホンザルの群れの中に混じってしまったので、現在ニホンザルの独自性を守るためにタイワンザルとハイブリッドを駆除する方向にむかっています。(もちろん悪いのはタイワンザルやハイブリダイゼーションの為生まれた新しい命ではなく、タイワンザルを逃がしてしまった人間です。)
どんなに理屈をつけようと、ハイブリッドは決して光が当てられるべき存在ではありません。
ハイブリッド個体がペットショップに数多く並べられ、その後繁殖知識のない繁殖マニアが種について考えることなく容易にハイブリッドを増殖させてしまう国内の現状は、非常に嘆かわしいと同時に、故意にハイブリッドを生み出す彼らマニアには、こちらと同じくブリーダーと名乗られることに恥ずかしい思いと激しい憤りを感じます。
ブリーダーは自分の行ないに自信と誇りと責任とを持たねばなりません。なぜなら甘えはすなわち種を貶めることにつながるからです。
「私はやってるけどあなた達はやらないでね」という繁殖マニアの姿勢は、ブリーダーとして失格です。(むろん彼らが愛好家であるとも到底思えません。)
次はハイブリダイゼーションとは別の問題です。同種間の繁殖においても注意する必要があります。その代表格は致死遺伝子同士の結合です。
劣性致死遺伝子
不完全優性遺伝子や半優性遺伝子と呼ばれる遺伝子の中には、劣性致死であるものが含まれています。
遺伝子を両親のどちらかからひとつ受け継いだ場合には特定の毛色や柄模様が表現されるものの、両親から受け継いでその遺伝子をふたつ持ってしまった時、その子供が生存能力に欠ける重度な障害を持っていたり、出産前に胎内で死亡してしまう、あるいは正常な外見で生まれてきても不妊であったりします。
どれが劣性致死遺伝であるのかは遺伝を学べばすぐ分かるので、同じハムスター種内であってもそれらの組み合わせは避けましょう。
以下は我が国でよく見かける致死と半致死遺伝の例です。
ホモ接合の個体の内ある程度の数が胎内で死亡しているのではないかと思わせる結果があります。
時として繁殖能力のない(不妊)パールが存在しますが、それらは胎内で死亡しないで生まれてきたホモ接合の個体であると考えられます。ホモ接合であるかどうかを外見で判断することが出来ない為、両親がはっきりしないパールで何度交尾が成功しても子どもが出来ない場合はこの可能性が考えられます。ただし不妊であると判明しても、健康面などではまったく問題はありません。
なおこのサイト内でも海外ブリーダーと同じく慣例としてウィンターホワイトのパールと名付けられた変異の遺伝子記号をPeとして使用していますが、どうもこのウィンターホワイトのパールは実際にマウスなどで確かめられているPearl(遺伝子記号Pe)と呼ばれる変異とは別のもののようです。したがってこのサイト内でパールの遺伝子記号として使用している"Pe"は仮記号としてご理解下さい。
劣性致死遺伝であるため、ホモ接合の個体は出産前に母の胎内で発生しても生まれる前に死亡し、母体に吸収されると報告されています。
プディングは遺伝学的にはアグーチイエロー(もしくは優性イエロー)と呼ばれる毛色で、この毛色のものは必然的に肥満因子を持ち合わせています。糖尿病にもなりやすいので、毛色と関連する因子以外の肥満や糖尿病関係の因子を表に出さない為にも、プディング同士のペアリングは避けることをお薦めします。またこの遺伝は劣性致死遺伝であると考えられますので、その意味からもプディング同士の繁殖は避けた方が宜しいでしょう。
パイド(斑紋模様)は遺伝学的には小眼球症と呼ばれるもので、劣性致死遺伝(生まれてきた子がヘテロ接合の場合は大丈夫だが、ホモ接合になると死に至ってしまう遺伝)をします。つまりパイド同士の個体をペアリングすると、受胎しても流産したり、また生まれたとしても子ども達の中に1/4の確率で生存に適さないホモ接合の個体を出現させてしまうのです。ホモ接合の個体は骨格が異常であり、また門歯や眼球が欠ける等の重い障害を持つので、その多くは満足な成長が出来ず死亡してしまいます。
ドミナントスポット同士の組み合わせでは1/4の確率でホモ接合の胎児を生じ、母胎内で死亡してしまうので、通常に比べて産仔数が少なくなります。
母体に害はないとされていますが、確証はありません(少なくとも母胎でいずれ死んでしまう個体が発生する時点では影響が出ていると思われます)。
※ドミナントスポットとは一般的に我が国で「ドミノ」と呼ばれる顔に鉢割れ模様の入る斑紋模様を指します。いわゆる茶白のブチに見られる、白く帯状に模様が入る斑紋模様の事ではありません。
この組み合わせも上記のドミナントスポット×ドミナントスポット同様、1/4の確率で生じるホモ接合の個体は、出生前に母胎内で死亡します。そのため通常に比べて産仔数が少なくなります。
シリアンハムスターのサテンは半優性遺伝です。サテン遺伝子をひとつ持つ場合は問題がないのですが、ふたつ持ってダブル(ホモ)サテンになった場合、被毛が少ない(時として極端に少ない)個体となってしまいます。
この他、まだ危険な組み合わせは存在します。
現時点の我が国にまだ入ってきていない突然変異遺伝子もいずれ日本に入ってくる可能性がある以上、ハムスターを飼う限りハムスターの遺伝の勉強を怠らないようにしたいものです。
繁殖を試みるハムスターはオスメス共に健康な個体でなくてはなりません。
健康状態はまず全体の様子、毛並み、呼吸、糞の状態、体重、食欲、歯並び、行動等からチェックしましょう。また性格もある程度遺伝するので、可能なかぎりペットにふさわしい性格のものを選ぶ事をお薦めします。
ハムスターの下痢が命取りにもなる程怖いものである事はよく知られていますが、軟らかい糞をする個体にもお腹の中に寄生虫を持っていたり、もしくは腸内菌叢に何らかのトラブルがある事が考えられます。ハムスターは食糞をする動物であるので、寄生虫は他の個体にも容易に感染します。当然ながら寄生虫キャリアである母ハムからの子どもは寄生虫に汚染される可能性が高くなります。先天的に腸内バランスの悪い場合なども、子の代では判らなくても孫の代でそれが表面化する場合も考えておくべきでしょう。
繁殖してしまってからでは遅いです。おかしいと思うことがあれば、繁殖するより前に専門家の診断を仰ぎましょう。時には繁殖を止める勇気を持つ事も必要です。
更に遺伝性の病気があります。
たとえばキャンベルハムスターの場合、糖尿病因子を持つ個体が他のハムスター種に比べて比較的多いとされますが、この病気は確実に遺伝するので糖尿病ではないかと疑われる個体の繁殖は避けた方が無難です。
また何となく体が弱いのではないかと飼い主が感じるところがある個体も繁殖からはずした方が良いかもしれません。
メスの場合、妊娠・育児は多大な負担がかかる行為であるので、どこかしら弱いところがあるハムスターの出産はその命を縮める結果となってしまいます。初産の時に死産をしたメスの中には生殖系のトラブルを抱えている場合も多いそうです。このようなメスにはもう繁殖をさせない方が良いでしょう。
※胎内、あるいは出産過程で死亡した子ハムは膜にくるまれ胎盤がついたままの形で(母親が食べられてしまわない限り)放置されるので判断できます。すぐ後に喰い殺すことになろうとも、通常に生まれてきた子ハムを包んでいる膜と胎盤は、産み落とした時に母親が食べます。出産の後に死亡している子どもを発見したとして、胞衣がなければ死産ではなかった(出生後何らかの原因で死亡した)と分かります。
はじめに
各ハムスターについて
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