今までにHBGに寄せられた質問に対する回答集です。
ハムスターについて書かれているサイトでよく「疑似冬眠」という言葉を見かけますが、これは何ですか?
「冬眠」とは違うものなのでしょうか?
冬眠する哺乳類 川道武男・近藤宣昭・森田哲夫編(東京大学出版会
2000年10月発行)から引用させていただきますと「ネズミ科の中で冬眠するのは、クロハラハムスター(いわゆるヨーロッパハムスターCricetus cricetus)キヌゲネズミ(Cricetulus triton)ゴールデンハムスター属の3種(Mesocrietus auratus、M. brandii、M. raddei)セイブカヤマウス(Reithrodontomys megalotis)の合計6種類」、つまりシリアンハムスター(Mesocricetus auratus)は冬眠する動物であるのに対して、WW(Phodopus sungorus)、キャンベル(Phodopus campbelli)、ロボロフスキー(Phodopus roborovskii)が属する、Phodopus属は冬眠はしないようです。
Phodopus属については「ジャンガリアンハムスター(ヒメキヌゲネズミ)Phodopus sungorusは冬眠しないが、日内休眠はする」という記述があり、「日内休眠では1回の休眠の最長持続時間が24時間を超えることはなく」、体温の下降も冬眠ほど大きくない=「十数度以下に体温が低下することもまれである」と続きます。これが疑似冬眠と呼ばれる現象です。
(※この日内休眠時における体温低下の冬眠時との違いとして「日内休眠時の体温低下が小さいのは、自力で体温上昇させて蘇生が可能な最低限界体温が高いためで、そもそも心臓の正常な活動を維持できる温度が高めであることに由来する」と文中で説明されています。)
「冬眠と日内休眠を明確に区別する境界は、動物の体サイズ・最低体温・代謝抑制率ではなく、休眠の最長持続時間であると、GeiseiとRuf (1995)は指摘して」おり、更に「眠りの進化からみて、日内休眠を睡眠から冬眠へと橋渡しする中間的存在ととらえる研究者もいる」そうです。
冬眠をする動物は長生きすると聞いたことがありますが、ハムスターの「疑似冬眠」がいけないことだとされているのは何故ですか?
科学的には「疑似冬眠」ではなく「日内休眠(daily torpor)」という語を用いるのが正しいようです。
「生物の科学 遺伝」 2002年1月号(56巻1号)『特集II 哺乳類の冬眠』に
よれば「日内休眠を引き起こす環境因子は,低温,食物の欠乏,日長の短縮などが知られているが,どの因子を引き金として用いるかは,それぞれの種の生活史
と密接に関係している」との事。いずれにせよ過酷な自然環境の中で生き延びるために身に付けざるを得なかった環境適応の方法だと考えられます。
(※冬眠する哺乳類 川道武男・近藤宣昭・森田哲夫編(東京大学出版会2000年10月発行)
88ページには実験下のハムスターは食物不足や水不足に低温が加わって冬眠を引き起こすとの記述があります。)
さて私たちが飼育しているハムスターですが、まず餌や水の欠乏という自然環境の中で考えられる最悪のストレスとは無縁です。
しかし反対に、野生下でのように地中に外気温に影響されにくい巣を作ることが不可能な、与えられた容器の中で暮らすしかない飼育下のハムスターには気温の変化に(飼い主の助けなくしては)充分に対応することは無理でしょう。
電灯を使用する部屋で飼育されているハムスターでは季節の移ろいを知らせる日照時間の変化をうまく感じ取ることすらできないのではないでしょうか。
これらのことから自然に冬に備えられない状態にある動物を野生動物と同じように上手く冬眠や日内休眠をさせてやることはかえって難しいことだと思われますし、実際、飼育下で冬眠状態になってそのまま死亡するハムスターも多いそうです。
そもそも飼育しているハムスターを危険を冒して冬眠、日内休眠させる(=過酷な環境条件をやり過ごし生き抜くために生理機能を低下させ代謝を抑えさせる)必要性や利便性は全く存在しません。むしろ日内休眠や冬眠をさせない方が望ましく、飼育するハムスターをそのような状態に陥らせることのないよう人間側が気を配る必要があります。
ここで誤解しないでいただきたいのは、ハムスターの日内休眠や冬眠は決してあなたの飼育環境が完全無欠なものであると保証したり、あるいは飼育技術が素晴らしいものであると証明するものではない、ということです。
自分の飼育環境が劣悪であることを自覚しつつ『疑似冬眠させてないから大丈夫』『疑似冬眠されても復活させるテクニックを持っているから安心』『死に至るわけではないし、うちのハムスターの体質は強い』と誇るような飼育は続けるべきではありません。
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はじめに
各ハムスターについて
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