ハムスターが実験動物として使われていることはかなり知られていることと思います。ハムスターが実験動物として使用されている事実に嫌悪感を感じている人 もいますが、ハムスター用エサとして重宝されているペレットの一部が実験動物用(あるいはそれに準ずる)ということでハムスター飼育者によって高く評価さ れているということもまた事実です。多くのハムスター愛好家にとって、ハムスターを実験動物として使う現場は未知なる場所であり、それゆえ色々と想像を働 かせ勝手に嫌悪感を抱いたり、反対にあこがれを感じたりしているのかもしれません。それもこれも実験動物としてのハムスターが飼育室の中で一体どの様に飼 育されているのか等についてはさほど知られていない為ではないかということで、今回は実際に研究施設でハムスターを含む動物を使って実験されている研究者 の方にお話を聞き、研究施設の現場について教えていただきました。
Cherry Field Works(以下C):
研究施設で実験動物として齧歯類が・・・ハムスターも含まれるわけですが・・・飼育されていることはよく知られていますね。それがどのように飼育・管理
されているのか、私たちには知りようがないので教えていただけますか?
Answer(以下A):
まず「科学的な実験・研究」といったものについての基本から話させてください。
前提として、科学的な真理と見なされる事柄、とりわけ実験によって確かめられた事柄は、
いつ・どこで・誰が同じ実験をやっても、同じ結果が得られなければなりません。
とある実験を考えた場合、薬品等に関しては純度の高い製品を選ぶこと、実験機材等のハードは同じメーカーの物を選ぶことで、同じ実験と呼ぶことができま
すが、これが動物を用いた実験の場合には更に気をつけないといけないことが増えます。
まず、高い品質の動物、つまり性質のばらつきの少ない動物を使う必要があります。
実験では、様々な実験処置をし、処置に対応して違うデータが得られる予定なわけですから、 動物の性質によるばらつきを注意深く排除しないことには、正確に結果の評価ができないからです。
その為には、厳密な血統コントロールを施した動物を使用し、その上で、年齢(小動物では 週齢や日齢)情報の明らかな動物を使うことで、それら要因によるデータの ばらつきを未然に防ぐ努力をします。
C:
実験動物についてちょっと調べてみると近交系の○○やら疾患モデルの△△やら
沢山あることが分かるわけですが、これらが厳密な血統コントロールを施した研究に使用する為の性質のばらつきの少ない動物たちというわけですね。
そのような実験に使われる動物は一般家庭のペットとは当然異なった形で飼育されていると思うのですが。。。
A:
動物を飼育する環境も非常に重要です。いつ実験をやっても同じ結果が得らる前提である以上、
動物を飼育する部屋には、一年を通じて完全な人工照明と温度のコントロール等が施されます。
C:
その環境は先生が所属されている研究室独自のものなのですか?
A:
いえ、その飼育室条件も、研究組織によって大幅に違っていては何かと不都合がでますし、
そもそも飼育動物と研究者双方にとっての快適な環境条件がそれぞれの動物室でかけ離れているわけはありません。実験動物施設基準研究会によって、マウス・
ラット・ハムスターで 温度18-26度、湿度40-60%、アンモニア濃度は20ppmを越えないこと、気流速度は0.2m/秒以下、
換気回数は1時間あたり6-15回、照度は150-300ルクス、そして騒音は60dBを越えない等、
基準値が提示されています。また、多くの施設では照明条件は点灯12-14時間/消灯12-10時間、
ケージサイズは15-25gのマウス一匹あたりの床面積77.4平方センチ高さ12.7センチなど
動物サイズごとの推奨ケージサイズも明確化されており、こういった方針で実験動物は 管理されます。
また、使用する動物が健康であることも必須条件です。それぞれ動物の生態にあった環境で飼育し、必要な栄養を考慮した飼料を投与し、感染症からも守って 飼育します。何らかの感染があることによって生体反応は変化しますからね。感染が関係なさそうな行動実験などでも、マウスで蟯虫感染によって行動が不活発化する(=大人しくなる)事が知られ ています。そのような実験結果への影響を防ぐために、動物を飼育する研究組織では各種感染症の検査が定期的に行われ、ウィルス・細菌・寄生虫等の感染を極力排除する事が、当たり前の運営方針となっています。
C:
一般的に実験動物よりも愛好家の元でペットとして飼育されている動物の方が幸せなんだと思われることが多いように感じるのですが、こうして研究施設で飼育されているハムスターの方が客観的に見て幸せである場合の方が多いかもしれませんね(苦笑)。
よくハムスター愛好家などが「実験動物のような」という語を使う場合には、前提としてそのような動物は当然ながら「実験」に使われ、実験後に殺されてしまうというイメージがあって、かなりのマイナス感情を 含んでいると思うのですが、実際の現場ではどのような感じなのですか?
A:
・・・・・・
意外と知られていないことですが、実験動物飼育者は動物好きなんですよ。というか、動物好きでないと勤まりませんし、動物好きなだけでは勤まりません。 日常的に絶え間なく注意深く観察しつつ飼育管理するには、動物好きでないとできないのです。嫌いなものに対する注意深い観察って難しいからじゃないかと思 うのですが。
動物の苦痛と異常を見逃してしまうような、観察力のない人が実験動物の飼育をしたって物の役には立ちません。こうやって、動物実験に供される 動物は、実験に使用されるその時点まで、健康に快適に過ごせるように注意深く飼育管理されます。
もちろん、実験使用にあたっては、できるだけ犠牲になる命を少なくするよう実験計画は検討・審査され、実験処置の際には極力苦痛が少なくなる様に取り扱 われ、実験終了時には科学的に安楽死と認められる方法で処置されます。
C:
自分がもしハムスターとなって実験動物として研究施設で飼育されるか、それとも一般的なペットとして飼育されるかを選ぶとしたら、私の場合は実験動物と
なる方を選んでしまいそうです、この環境だと。
どうして実験動物が悲惨であるというイメージが世間体に広まってしまったのでしょうか?
アカデミックな世界と私たちファンシーの世界が乖離していることに原因があるのか、それとも実験の有り様を垣間見た人や当事者が誤解されるような事を 言ってしまったのが噂になって広まってしまったとか。実験動物というだけで拒絶反応を示す人が実際にいるのは残念なことですね。今回お教えいただいた実験 室での飼育方法やあり方などは、一般人がそのまま真似ることは不可能だとは思うのですが、とても興味深いですし、参考になる面も多々ありますのでアカデミックな世界の方と交流を持ちたいと私などは思うわけですが。。。
動物実験に従事する側に、配慮に欠けるものがいるのは残念な事実です。
きちんとした教育を受けた、あるいは自習する能力のある動物実験従事者は、非・実験者の心情に配慮を行うことを当然の心がけとし、動物実験の生々しい体験を動物実験に従事しない人に軽々しく語る・実験動物の遺体を人目に触れるところに 放置する、この種の行動をとることはありません。
しかしまれに、実験に従事しない人にとってエキセントリックな言動をすることで、自らを特別視してもらいたいという願望があるエセ研究者・・・自称研究者といってもいいのですが・・・が実在するのが残念な事実ですし、そういった人物の方が声も態度も大きいのです(笑)。 彼(彼女)らは、そのように行動することによって、なんらかの優越感をえるようですね。もちろん、それは明らかな勘違いであり、そのような自 称研究者は、実態が判明して以降、研究に取り組んでいる者からまともに相手にされることはなくなります。言ってる事とやっている事が違いますから ね・・・って、これは何処の社会でも同じで、そういう人は同じ世界の人から相手にされませんよね。
HBGですでに言及していらっしゃるように「学術的」と いう枕詞を冠した情報を鵜呑みにしてはいけないのと同様、研究組織に属していると自称する人物を盲目的に奉らない注意が必要です。
C:
なるほど、私たち一般飼育者は−ハムスターが実験動物とされることが気にくわない人も含めて、やはり研究者の方々の存在、実験から得られる科学的なデー
ター、それらから導き出される答、知識を持つ専門家の方々はとても気になるものなのですが、「研究組織に属している」と自己申告されてもそこで催眠状態に
なって盲目的に信じてしまってはいけないというわけですね。
こういった人々の語る(一般人にとって理解しがたい)動物への接し方から研究者全員への不信感を持ってしまっては真摯に研究されている方々へ対する大変 な侮蔑となると同時に、私たち自身にとっても不幸なことでしょうし。HBGで自分たちの提供する情報を盲目的に信じるなと言っていることと同じく、自分た ち自身が専門家や研究者と自称される方々の言うことを盲信することがないよう肝に銘じます。
A:
蛇足となってしまうかもしれませんが、研究者とは情報の生産者であり、伝聞でしか情報を語れない/情報源が明確でない/他者の生産した情報を自ら得た情報として語る研究者もどきとは厳格に区別してくださいね。
もちろん、我々、研究者と呼ばれる側に属する人間も、研究とは結果を公表するところまでを含むこ
と、そして犠牲になって貰った命に対する感謝を忘れないように、常に自戒したいと思います。
ちなみに、動物を使った研究をする組織では、動物慰霊祭を定期的に行います。仏式以外の慰霊祭は聞いたことはありませんが、うちのネズミは仏教徒だっ け?とツッコミをしないように、その日には改めて自戒を胸に刻みたいと思います。
C:
話している内容と実際にやっている事を吟味すれば本物(情報の生産者である研究者)と偽物(自称研究者)の区別がつくはずだし、また私たちが正確な情報
を得たければ、それらの区別をつけられなければならないということですね。
本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
国立遺伝学研究所の一般公開日に撮影した実験動物用飼育容器
(この中にはMSMと名付けられた系統のマウスが入れられていました)
はじめに
各ハムスターについて
FireFoxを 推奨します。
FireFox 2.0, IE 6 or higher
Screen 800×600
font size 12pt.
このサイト内の画像および文章はCherry Field Worksに帰属します。
© Cherry Field Works 2001- All rights reserved.SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||